Hirofumi Yoshida - 吉田裕史

吉田裕史:指揮者
東京音楽大学指揮科及び同研究科修了。ドイツ・イタリアで研鑽を積み、2007年ローマ歌劇場カラカラ浴場野外公演を指揮、2010年1月よりマントヴァ歌劇場音楽監督に就任。
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2010年7月24日 23:00
「蝶々夫人」に見る"女"の変容(メタモルフォーゼン)
写真は「トゥーランドット」でリュー役を歌うDonata D'Annunzio Lombardiです。その声はとても美しく、柔らかくピュアなので、一途さと可憐さが要求されるこの役に見事にはまっています。もっとも、一番多くキャスティングされるのは「ラ・ボエーム」のムゼッタ役で、今までに150回以上も舞台に立っているそうです。
そんな彼女との、今日のリハーサル中の会話:
(3幕のリューのアリアについて音楽的な打ち合わせをした後で)
私: ところで、明日の演出リハーサルでは1幕のアリアをもう一回やりたいね。
ドナータ: 明日は、私、「蝶々夫人」の本番だわ。
私: ??!! 今回、「蝶々夫人」も歌うの?? でも、率直なところ、蝶々さんの役は、君の声に合っていないと思うけど。
ド: (よく質問してくれましたとばかり、少しニヤッとして)そこがこの役の興味深いところだと思うの。 実はプッチーニはこの役を本来はソプラノ・リリコに設定しているわ。決してスピントではないの。
私: それは確かにそうだけど、、実際にはスピントやドランマティコといった声が求められるよ。特に3幕では、音楽的に間違いなくドラマティックな表現が必要だ。
ド: もちろん! その通りだわ。 でも、1幕の彼女の年齢設定は15歳で、、言ってみればまだ "少女" なの。まだ決して "女" ではないわ。 2幕の途中、シャープレスが訪ねてくるシーンでも、もう子供を授かった後にもかかわらず、まだそうした幼さや純粋無垢なニュアンスが残っているわ。
私: そうだね。 そして3幕では、母親としての自覚と覚悟が描かれ、明らかに本当の "女" に変わる。そういった観点からすると「蝶々夫人」は、ある意味、女性の変容(メタモルフォーゼン)劇と言えるかもしれないな。
ド: そして、3幕の最後には、母性の持つ本能として、いかにして子供を守るかということを考える次元にまで成長するのよ。歌い手にとってこれほど難しく、でもやりがいのあるオペラはないわ。 リリコ的な要素を求められる1幕から本物のスピントが要求される3幕に至るまで、その内面の成長に伴った声が必要だわ! (以下、延々と続く、、、)
ドナータ・ダンヌンツィオ・ロンバルディ、本当に魅力的なディーヴァです。
Hirofumi Yoshida


